Shokuikuブログ【伝えないと、分からない''食の価値''】
早くも1月が終わり、もう2月。
節分が過ぎ、暦の上ではもう春です。
今年の丹後は本当に雪が降りません。
昨年は、丹後で経験したことないくらいの大雪が降っていましたが、
今年は、丹後で経験したことないくらい雪が降りません。
極端すぎます。
この雪不足が今年の稲作などにどう繋がってくるのか、、、
農家さんや漁師さんからは少し不安の声が漏れています。
さて、今回は食に携わっているなかで、一番伝えていきたい事についてまとめてみます。
お店に小松菜を買いに行ったとき、束になった小松菜が売られていることを想像してみて下さい。
『値段やひと束の量が同じで、見た目もだいたい同じ小松菜』があったとします。
違いがあるとすれば、『袋に書かれている生産者さんの名前だけ』
この場合、皆さんはどのように小松菜を選びますか?
見た目からしか情報がない場合は、出来るだけきれいだったり、量が多そうだったりするものを選ぶ人が多いのではないでしょうか。
少しここから、小学校で栄養士をしていた頃の話をさせてください。
<小学校での食育の経験>
以前、東京都の栄養士として、5年間大田区の小学校で日々子ども達への食育に取り組んでいました。
当時、中でも「地産知消」に力を入れて取り組んでいました。
「地産地消」とは、ご存知の通り、その土地で生産された食べ物をその土地で消費する取組です。
地産地消をすると、良いことがあると言われています。
例えば、
①生産者との距離が近いので、生産者の顔が見え、安心安全な食べ物を食べることができる
②生産地との距離が近いので、新鮮な食材を食べることができる
③食材の輸送距離が短いため、輸送時に出る二酸化炭素の量が少ない
などです。
僕が栄養士をしていた大田区は農地が少なく、給食において、大田区で獲れた食材を使うことはできませんでした。
しかし、縁あって江戸川区の小松菜農家の「平野さん」と繋がることができ、この平野さんの小松菜を給食で使い、子どもたちに地産地消のことを教えていました。
最初の1年は、ただ単に平野さんの小松菜を給食で使い、給食時間に教室に行き、
「今日の小松菜は江戸川区でとれた小松菜ですよ」
「地産地消ですね」
「地産地消には、生産者の顔が見えるという良いことがありますね」
などとありきたりのことを伝えるだけでした。
もちろん、自分も平野さんに会ったことはなく、業者さんからのチラシで平野さんの顔だけ一方的に知っているという感じでした。
1年間言い続けると、子どもたちのなかで「地産地消」が知識としては定着し、
1年生から6年生まで「地産地消の意味って何だっけ?」「どんな良いことがあるんだっけ?」
などと質問をすると、
「その土地で生産されたものを、その土地で消費することだよ」
「生産者の顔が見えるから安心な食材を食べることができるんだよ」
と答えるようになりました。
が、ここで自分の中にふとした疑問が湧き上がってきました。
「果たしてこの子たちは、生産者の顔を見たことがあるだろうか・・・?」
「地産地消の良さだけ伝えても、実際に子どもたちは地産地消の良さを実感できてないよな・・・」
そこで私は、農地に行き、子どもたちに生産者さんの顔を見せることの必要性に気づき、実際に農家さんの元を訪問することにしました。
実際に畑に行ってみると、自分の中でも発見の連続でした。
こちら、小松菜農家「平野農園」の平野靖和さん。
平野さんとの出会いで、人生が変わるきっかけをいただきました。
平野さんは主に給食用に小松菜を栽培されており、
子どもたちのために、『安心・安全』にこだわった美味しい小松菜を栽培されております。
これが平野さんの畑です。
住宅街の中に、両隣を住宅に囲まれて、ビニールハウスが立っています。
お話を伺い、東京都という人口密集地でやる都市型農業の難しさに気づいたり、生産者の平野さんの小松菜作りに対する思いに触れたりすることができました。
そして、この取材させていただいた内容を学校に持ち帰り、給食時間を中心に平野さんのことを子どもたちに伝え、
地産地消の良さの一つである「生産者の顔が見える」という点を本当に実感できるような指導を行いました。
こんな感じの写真を用い、平野さんの小松菜についての説明をするようになりました。
平野さんが、ITの世界から農業の世界に飛び込んだ話や
小松菜の種まきから収穫までには40日かかる話
収穫時はこのように、時間をかけて1本1本手でとって収穫している様子に加え、
収穫後はひと束ひと束、虫や土が入らないように丁寧に洗浄をして出荷されている様子などです。
するとなんと、指導を繰り返しているうちに、
「小松菜を嫌いで食べなかった子が小松菜を食べるようになる」
という大きな変化がありました。
とても感動したのと同時に、僕はここに大きな可能性を感じました。
「小松菜にはカルシウムがあるから食べたほうがいいよ!」
なんて指導してもなかなか行動変容に繋がらないのに、
食べているものを「誰が」「どこで」「どんな風に」作っているかを丁寧に伝えるだけで、行動変容したのです。
スーパーでただ単に野菜を買うだけでは絶対に分からない、
食べ物の作り手の努力や思いを表に出して伝えていくことの重要性を感じた瞬間でした。
さて、この『生産者さんが、どのようにその食べ物を作ったか』というストーリー
普段の生活の中で、このストーリーに触れる機会などほとんどないのではないでしょうか。
でも、この生産現場のストーリーを人に伝えると、人の心を動かし、
食育的にいうと『行動変容にまで繋がる可能性がある』
めちゃめちゃ価値があると思うんです。
このストーリーを伝える事に。
今までやってきた丹後バルの取り組みの中でも、参加者の方へのメッセージとして、この生産者さんの生産のこだわりを知っていただくことを意識しております。
でも今の世の中、『まだまだこのストーリーに価値を感じる人が少ない』
この生産現場のストーリーの価値が重んじられる世の中になると、食の大量生産、大量消費の流れが変わり、もっとひとりひとりが食のことを大切に考え、環境面や健康面で表面化している様々な課題解決に繋がり、さらに言えば持続可能な社会に近づくのではないかと思っています。
現在も、試行錯誤の連続ですが、『この裏側を伝える価値』を持続可能な形で提供できるように管理栄養士として自分にできることに励んでいきたいと思います。
どのように伝えていけば、より多くの人に裏側のストーリーの価値を感じていただけるか。
まだまだ、知恵が足りません。
共感してくださる方は、ぜひお知恵をお貸しください!!!
以上!食べ物の裏側の価値についての話でした!
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